住み慣れた地域で最期まで 

「家にいたい」という悲願

認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長/東京大学名誉教授上野千鶴子

現行の介護保険制度は、1997年に成立し、2000年から運用が始まりました。すでに多くの方が、この制度の恩恵を受けておられると思います。

ただ、この介護保険をつくったのは高齢者当事者ではありません。その人たちより30歳ほど若かった、いわば「介護世代予備軍」の人たちが、「将来、親の介護の負担を少しでも軽くしたい」という思いからつくった制度です。

介護保険が始まってから、私は介護の現場に入り、調査・研究を行ってきました。その成果として出版したのが『おひとりさまの老後』(文藝春秋)という本です。

結婚していようがいまいが、人は誰でも最後はひとりになります。だからこそ、ひとりで暮らせる準備をし、老後を自由に楽しもうと呼びかけました。

「おひとりさま」は、今後間違いなく増えていきます。家族をつくらない人、つくれない人、つくっても途中で壊す人、失う人もいます。家族がいても、依存しない、できない、したくないという人もいます。

かつてはお年寄りがひとりで暮らしていると、あたりまえのように「おかわいそうに」「おさみしいでしょう」と言われました。

自分で選んだひとり暮らしなのに、「そんな心配は大きなお世話です」と言うためにこの本を書きました。



上野千鶴子

認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク理事長/東京大学名誉教授

【うえの ちづこ】京都大学大学院社会学博士課程修了、平安女学院短期大学助教授、シカゴ大学人類学部客員研究員、京都精華大学助教授、国際日本文化研究センター客員助教授、ボン大学客員教授、コロンビア大学客員教授、メキシコ大学院大学客員教授等を経る。1994年『近代家族の成立と終焉』(岩波書店)でサントリー学芸賞を受賞。『在宅ひとり死のススメ』(文藝春秋)、『アンチ・アンチエイジングの思想』(みすず書房)など著書多数。