人生にサバンナマラソンを。
(有)フロム・サーティ 代表取締役/(一社)ハッピートークアカデミー 代表理事池崎晴美

私は「ハッピートーク」という、言葉や話し方、心の在り方に注目したコミュニケーションメソッドを提唱しています。
「人は言葉の力で元気になれる」、これは脳の仕組みから、言葉が前向きになると脳もその言葉に反応してポジティブ思考になり、行動も前向きになり、その結果、人生がどんどん良くなっていくという考え方です。
これまで企業研修や学校の公開授業など、延べ5万人以上の人に「ハッピートーク」を伝えてきました。
でも、「それだけじゃ足りない。自分の体験を通して伝えていきたい」という気持ちが強くなっていきました。そして還暦を目前に控えた59歳の時、「次は何にチャレンジしようかな」と考えていたところに「サバンナマラソン」の話を聞いたのです。
これはアフリカの自然保護区に入り、5日間かけて230キロを走り抜く大会です。「野生のキリンや象がいる草原を走る」と友人から聞いて、「来年、還暦記念に走るぞ」と決意して、エントリーしました。
この過酷なマラソンを走り切った体験を、帰国後、講演会で伝えることができたら誰かのお役に立てるかもしれないと思ったのです。
周りの仲間にこの話をすると、みんなから「生きて帰ってこられないよ」と心配されました。それで「なぜ挑戦するのか」を整理しました。
一つは「子どもたちに夢を追い続けることの大切さや、新しいことに挑戦する楽しさを伝えるため」
もう一つは「何歳になっても好きなことにチャレンジできることを大人にも伝えるため」です。
そう伝えていくうちに応援してくれる人が増えていきました。
そんな折、友人から、「エントリーの費用から旅費まで全部で150万円はかかるんでしょ。帰国後に開催する講演会の費用はクラウドファンディングで集めたら?」と提案されました。最初は勇気が要りましたが、自分の想いをクラウドファンディングで発信したところ、徐々に支援者が広がり、最終的に229人が賛同してくれました。
クラウドファンディングってお金をもらうものと思われがちですが、私はそれよりもはるかに大きな「229人の想い」を受け取ることができました。これがサバンナでどれほど私を支えてくれたことか。
〇体力と精神力の限界に挑戦
準備は、真夏の山で重い荷物を背負って走る「トレイル練習」やダンベルを使った筋トレなどを1年かけてやりました。そして2024年8月28日、日本を飛び立ち、25時間かけてナイロビに到着。体調を整えるために2日間ホテルに泊まり、いよいよ自然保護区へ出発です。
自然保護区へはバスで移動です。日本では考えられないおんぼろバスで、ほとんど舗装されていないガタガタ道を6時間かけて走り、自然保護区に到着しました。そこは音のない世界でした。目の前ではシマウマの群れがゆったり、のんびりしていて、時間が止まったような光景が広がっていました。
明日からこの大地を走るワクワク感と、完走できるだろうかという不安が入り混じっていました。
自然保護区にはホテルなどありません。参加者は全部で100人。夜はその100人が男女問わず50人用のテントで寝ます。皆さん、サバンナマラソンに参加するくらいですから、いろんな国の強靭なアスリートばかりです。
このマラソンは、サバンナの野生動物を守るレンジャーさんの活動資金を集めるために開催されています。そのため、普段は立ち入ることができない自然保護区を走ることが許可されています。
体力と精神力の限界と向き合いながら走るので、ドクターも同行していますし、レンジャーさんも選手をサポートしてくれます。
持ち物は5日分の食料、着替え、夜は冷え込むので冬用の服、寝袋、医療グッズ、緊急用のホイッスル、食器、トイレットペーパー等々、これらが入った10キログラムのリュックを背負って走ります。
〇助けられ、支えられ
いよいよ1日目がスタートしました。勢いよくスタートしたものの、1日目のゴールの残り数キロのところで足がつり、熱中症の症状が出て、走れなくなって座り込んでしまいました。
後ろから来た日本人ランナーの方が声を掛けてくれて、「靴は脱いだほうがいいよ」とか、自分のリュックから「これ即効性がある栄養補助ジェルだから」と、1個取り出して私にくれました。
この過酷な状況の中で、しかもレースの初日に、自分のために準備したものを他人にあげるという行為は簡単にできることではありません。本当にありがたくいただきました。
それから何とか元気を取り戻して進んでいくと、キリンの親子の優雅な姿に出会いました。「あぁ、本当にサバンナに来たんだなぁ」と実感しながら1日目が終わりました。
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(有)フロム・サーティ 代表取締役/(一社)ハッピートークアカデミー 代表理事
【いけざき はるみ】「言葉で人生をきりひらく」ことを伝える言葉の専門家。話し方講師、フリーアナウンサー。全国の学校や企業で「ハッピートーク(R)」の講演・研修を行い、前向きな言葉が心を軽くし、人を勇気づけることを伝えている。経済産業省「キャリア教育アワード優秀賞」、博報堂教育財団「博報賞」受賞。著書に『心をギュッとつかむ話し方入門』(かんき出版)『ハッピートークトレーニング』(すばる舎)など。言葉を通して、人が自分らしく笑顔で過ごせる毎日を応援している。
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