人生を彩る奇跡の出逢い

音楽さえあれば生きられる

(一社)日本発声医学協会代表理事/ヴォイストレーナー野口千代子

私が生まれたのは東京の下町です。その町で祖父母は小さなおもちゃ工場を営んでいました。当時はおもちゃも、洗面器やバケツなどの日用雑貨もみんなブリキでした。

昭和20年代の後半頃、アメリカからプラスチックが入ってくるようになり、祖父母の工場でもそれらを原材料にしておもちゃや雑貨を作るようになりました。

私は小学校に入る前から、今でいう「アトピー性皮膚炎」で、顔がお化けみたいにむくみ、皮膚は真っ赤でした。

症状は痒いんですね。かくと顔の皮膚が剥けてお化けみたいな顔になるんです。

幼稚園ではみんな気持ち悪がって、「病気がうつる」と言って誰も近づいてきませんでした。

祖母が私をいくつかの病院に連れて行くのですが、どこでも「原因が分からない」と言われました。

都立病院で「アメリカから新薬が届きました。保険はききませんが、試してみませんか?」と言われました。1本3万円もする静脈注射でした。

両親は「このまま小学校に上がると、みんなからいじめられる。何とか治したい」という一心で試しました。

新薬は効きました。あっという間に肌は綺麗になりました。

でも2か月ほどしたら副作用で、さらにひどくなりました。

痒くて痒くて体中かきむしり、朝起きると皮膚と下着がくっついてはがれないのです。

ある朝、トイレに行ったら血尿が出ました。病院に行くと薬の副作用だと言われました。やがて私の右の腎臓は機能しなくなりました。

両親は医師から「腎臓を取るか死ぬか」と迫られ、泣く泣く右の腎臓を取る手術を選んだのです。



野口千代子

(一社)日本発声医学協会代表理事/ヴォイストレーナー

【のぐち ちよこ】ウィーン国立音楽大学大学院発声学科修士課程卒業。オーストリア国家資格取得。発声学・発声医学専門家。ウィーン少年合唱団のヴォイストレーナーも務めた。東京都教育研修センターキャリア教育講師。著書に「誰でも2オクターブ出せるヴォイストレーニング」(平凡社新書)がある。