「ありのまま」を言えない日本語

「ヘンな日本語」は本当に変なのか

放送大学教授滝浦真人

◯そもそも言語とは?

私は放送大学の言語についての講座を担当しています。今回は「ありのままを言えない日本語」と題してお話しします。

本題に入る前に考えてみたいのですが、そもそも言語とは、何をするものなのでしょうか。

いろんな捉え方があり得ますが、「言語は世界がどうなっているのかを写し取る道具だ」と言うこともできるでしょう。「〇〇が〇〇になっている」と表現する時、私たちは言葉を用いて物事を正確に描写しようとしているわけです。

そうなると、今回の演題「ありのままを言えない日本語」とは奇妙な話になってしまいます。言語とは物事のあり方を写し取る道具とも言えるのに、日本語はそうしない、あるいは、それを好まない。どこか矛盾めいていますが、これが今回の話の要点です。

どういうことなのか、これから具体的に考えていきましょう。



滝浦真人

放送大学教授

【たきうら まさと】1962年生まれ。東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科言語学専門課程博士課程中退。博士(文学)。専門は言語学、とくに語用論と対人コミュニケーション論。著書に『日本の敬語論』(大修館書店)、『ポライトネス入門』(研究社)、『日本語は親しさを伝えられるか』(岩波書店)などがある。